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宿日直許可とは何か:寝当直が労働時間にならない条件
労基署の宿日直許可がある当直は、労働時間規制の対象から外れます。根拠条文、許可の条件(手当は1日平均額の3分の1以上、宿直は原則週1回)、バイト先での扱いを整理します。
当直バイトの求人でよく見る「寝当直」。この言葉は俗称ですが、法律の上では「宿日直許可」を受けた当直かどうか、という区別に対応します。許可の有無で、その夜の時間が労働時間として数えられるかどうかが変わります。上限規制が始まってからは、本業とバイトを合わせた働き方にも関わる話になりました。条文と厚生労働省の通達・FAQをもとに、法的な位置づけを整理します。
根拠は労基法41条3号と施行規則23条
労働基準法41条は、労働時間・休憩・休日の規定を適用しない労働者を定めています。その3号が「監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの」です。これを具体化したのが労働基準法施行規則23条で、宿直または日直の勤務で断続的な業務について、所轄の労働基準監督署長の許可を受けた場合は、法32条(労働時間)の規定にかかわらず従事させることができる、としています。
つまり宿日直許可は、病院が労働基準監督署長から受ける許可です。医師個人が取るものではありません。
ここで混同しやすいのが医療法16条です。医療法16条は、病院の管理者は医師を宿直させなければならない、と定めています。厚生労働省のFAQは、この医療法上の宿直を行わせること自体に宿日直許可は必要ない、と説明しています。医療法の宿直は「置かなければならない」という義務の話で、宿日直許可は「労働時間として数えるかどうか」の話です。別々の制度だと考えると整理しやすくなります。
許可があると何が変わるか
FAQによると、宿日直許可を受けた場合は、その許可の範囲で労働基準法上の労働時間規制が適用除外になります。医師の働き方改革との関係では、次の2点が挙げられています。
- 時間外労働の上限規制との関係で、労働時間としてカウントされない
- 宿日直許可を受けた宿日直(9時間以上連続したもの)は、勤務間インターバルの休息時間として扱える
一方で、許可があっても何も払わなくてよいわけではありません。令和元年の通達(基発0701第8号)は、許可のある宿日直中に、突発的な事故による応急患者の診療や入院、患者の死亡、出産などへの対応といった「通常の勤務時間と同態様の業務」に従事することが稀にあった場合、許可を取り消す必要はないとしつつ、その時間については時間外労働の手続をとり、法37条の割増賃金を支払うよう取り扱うこととしています。
逆に、通常と同じ態様の業務に従事することが常態になっているなら、許可は与えられないとされています。寝当直と呼ばれていても、実際には一晩中救急対応が続くような当直は、許可の前提と合いません。
許可の条件:医師向けの細目と一般の条件
医師・看護師等の宿日直については、通達が許可基準の細目を定めています。要点は、通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後であること、宿日直中の業務が特殊の措置を必要としない軽度または短時間の業務に限られること、宿直の場合は夜間に十分な睡眠がとり得ること、そして一般の宿日直許可の条件を満たしていることです。4つの要件の詳細と全国の許可件数の推移は働き方改革の現在地の記事で扱ったので、ここでは「一般の条件」のほうを見ます。
FAQの別添資料は、一般の宿日直許可の条件を次のように整理しています。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 業務の実態 | 常態としてほとんど労働することがない |
| 通常業務との関係 | 通常の労働の継続ではない |
| 宿日直手当 | 同種の業務に従事する労働者の1人1日平均額の3分の1以上 |
| 回数 | 原則として宿直は週1回、日直は月1回以内 |
| 設備 | 宿直について相当の睡眠設備がある |
回数には例外があります。FAQでは、宿直週2回や日直月2回といった形で認められたケースがあるとされています。医師不足の地域で、週末の連続した宿日直を遠方の非常勤医師で確保する実態を踏まえた例外が挙げられています。
手当の「3分の1」は、同じ病院の常勤医の賃金が基準になるのが原則です。ただ、対象の宿直をすべて非常勤医師で回している場合について、FAQは、賃金構造基本統計調査の医師の賃金から算出した日額の3分の1を参考に評価した事例がある、と紹介しています。
許可は病院全体で一律である必要もありません。所属診療科、職種、時間帯、業務の種類を限って与えることができ、「深夜の時間帯のみ」「病棟宿日直業務のみ」といった許可も可能とされています。同じ病院の同じ夜でも、時間帯によって扱いが異なることがあるわけです。
バイト先の当直ではどう考えるか
非常勤の医師も宿日直許可の対象になる、とFAQは明記しています。バイト先の当直に許可があれば、その時間は上限規制の労働時間に数えられません。
回数の上限は医療機関ごとに数えます。FAQには、同じ週に本務先で1回、兼業先で1回、それぞれ許可のある宿直に従事することは可能だ、という回答があります。ただし同じ資料は、複数の使用者のもとで宿日直に頻繁に従事すると、通常の勤務と相まって長時間の拘束につながることが懸念される、とも注意しています。
許可がない当直はどうなるか。労働基準法38条は、労働時間は事業場を異にする場合も通算すると定めています。許可のない当直の時間は、原則どおり労働時間規制の対象になり、本業の労働時間と通算して考えることになります。上限規制の枠をどれだけ使うかは、許可の有無で大きく変わります。
収入の面では、許可のある当直は「拘束は長いが業務は軽い」ことが前提です。日当を拘束時間で割った時給が低めに出ても、制度上はつじつまが合います。反対に、日当は同じでも救急対応が続く当直なら、実働あたりの単価は下がります。日当の時給換算と税引き後の手取りは当直1回5万円は時給いくらかで整理しています。ご自分の条件で試すならバイト換算ツールが使えます。
求人を見るときに確認したいこと
許可の中身は、労働基準監督署から交付される「断続的な宿直又は日直勤務許可書」に書かれています。FAQによると、許可書には回数などの内容に関する「付かん」が記載され、その内容に沿って宿日直を行う必要があります。許可後に人員や業務内容が変わり、通常と同じ態様の業務が常態になっている場合は、勤務内容の見直しなどが必要とされています。
バイトの条件を確認するときは、次の点を先方に聞いておくと判断しやすくなります。
- その当直に宿日直許可があるか
- 許可の範囲(時間帯・業務の種類)に自分の担当業務が入っているか
- 救急対応などが発生した時間の賃金の扱い
この記事は条文と厚生労働省の通達・FAQの範囲で書いており、個別の当直が許可の基準を満たすかどうかは判断していません。許可の有無や範囲は勤務先ごとに異なります。個別の労働条件については、勤務先の労務担当や所轄の労働基準監督署にご確認ください。厚生労働省も、医療機関向けに宿日直許可申請の相談窓口を設けています。
出典
- 厚生労働省 医師の宿日直許可基準・研鑽に係る労働時間に関する通達(基発0701第8号ほか)
- 厚生労働省 医療機関の宿日直許可申請に関するFAQ(2022年7月29日ver.)
- e-Gov法令検索 労働基準法(第38条・第41条)
- e-Gov法令検索 労働基準法施行規則(第23条)
- 厚生労働省 医療機関の宿日直許可申請に関する相談窓口のご案内
確認日 2026-09-27。数値は出典の公表時点のものです。