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働き方改革2年半、週60時間超の勤務医は15.0%

公開 2026-09-20働き方改革 当直 統計

上限規制の施行から2年半。週60時間以上働く病院常勤医の割合は39.2%から15.0%へ下がりました。宿日直許可の件数の動きと、当直バイトへの影響を数字で整理します。

医師の時間外・休日労働に上限が設けられたのは2024年4月です。2026年9月時点で2年半が経ちました。制度の説明はあちこちにありますが、「で、実際どこまで動いたのか」は数字を並べないと見えません。厚生労働省の検討会資料(第1回 令和8年度医師の働き方改革の推進等に関する検討会、令和8年7月13日)をもとに、現在地を整理します。

上限の枠組みをおさらいする

同資料によると、勤務医の時間外・休日労働の上限は水準ごとに分かれています。

水準年間の上限主な対象
A水準960時間原則的な水準
連携B水準1,860時間(各医療機関では960時間)派遣先と通算すると長時間になる医師
B水準1,860時間地域医療の確保が必要な業務
C-1水準1,860時間臨床研修医・専攻医の研修
C-2水準1,860時間高度な技能の修得

連携B水準は「通算すると1,860時間まで」であって、1つの医療機関あたりでは960時間です。複数施設で勤務する医師にとっては、ここが一番誤解の生まれやすい部分だと思います。

あわせて、追加的健康確保措置として面接指導と休息時間の確保が定められています。面接指導は1か月の時間外・休日労働が100時間以上となる見込みの場合に実施し、155時間を超えた場合は遅滞なく労働時間短縮の措置をとることとされています。休息時間については、勤務間インターバルと代償休息の確保が求められる、という枠組みです。A水準では面接指導が義務、休息時間の確保は努力義務で、連携B・B・C水準ではどちらも義務とされています。

長時間労働の割合はどう動いたか

厚生労働省は3年おきに医師の勤務実態調査を行っています。週の労働時間が60時間以上(時間外・休日労働が年960時間換算を超える水準)の病院常勤勤務医の割合は、次のように推移しました。

調査週60時間以上の割合対象数
平成28年39.2%10,738人
令和元年37.8%8,937人
令和4年23.7%11,466人
令和7年15.0%13,205人

令和7年度の調査は令和7年10月に実施され、結果は令和8年7月13日に公表されています。10年弱で39.2%から15.0%へ、4割弱から6〜7人に1人へという動きです。

この割合は、時間外・休日労働の年換算を「(週労働時間−40時間)×48週」で計算したものです。あくまで調査週の労働時間からの換算なので、季節変動や当直の入り方によって個人の実感とはずれます。数字が下がった理由が労働時間そのものの短縮なのか、自己研鑽と労働時間の切り分けが進んだためなのかまでは、この集計からは分かりません。

診療科別では差が残ります。令和7年度調査で週60時間以上の割合が高いのは、外科25.1%、救急科23.7%、産婦人科22.8%の順です。全体が15.0%まで下がった一方で、これらの科は2割を超えています。

宿日直許可はどうなったか

上限規制とセットで動いたのが、宿日直許可です。労働基準法41条3号に基づき労働基準監督署の許可を受けた宿日直は、その待機時間が労働時間に算入されません。つまり、許可のある当直は上限規制の時間数に乗ってこない、という扱いになります。

医師の宿日直許可の基準は、令和元年7月1日の通達(基発0701第8号)で示されています。要件は次の4つです。

  1. 通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後であること
  2. 宿日直中の業務は、特殊な措置を必要としない軽度・短時間の業務に限られること(軽度の処置、看護師への指示確認、非輪番日の少数の軽症外来対応など)
  3. 夜間に十分な睡眠がとり得ること
  4. その他、一般の宿日直許可の条件(手当の下限、回数の限度、睡眠設備など)を満たすこと

許可は診療科・職種・時間帯・業務の種類を限定して取ることもできます。「病棟の宿日直業務のみ」「深夜帯のみ」といった形です。また、許可を得ていても、宿日直中に通常と同じ態様の業務(突発的な応急患者への対応など)に従事した場合は、その時間について本来の賃金(必要なら割増賃金)を支払う必要があるとされています。

全国の許可件数の推移は次のとおりです(労働基準監督署の許可件数のうち医師に関するものの集計)。

許可件数
令和2年144件
令和3年233件
令和4年1,369件
令和5年5,173件
令和6年2,715件
令和7年270件

令和5年に大きく増え、その後は令和7年に270件まで落ち着いています。施行前に申請が集中し、一巡したあとに減った、という読み方は自然ですが、資料に理由の記載はないので断定はできません。あわせて、厚生労働省の相談窓口への宿日直許可に関する相談件数も、令和4年度301件、令和5年度96件、令和6年度10件、令和7年度11件と減っています。

一方で、医師の側の把握はまだ完全ではありません。令和7年度の調査(医療機関における勤務環境改善のための調査分析事業)では、自分の宿日直業務が許可を得ているかを「知っている」と答えた医師は71.0%(n=3,613)でした。そのうち許可の内容まで知っているのは79.2%です。単純にかけ合わせると、内容まで把握しているのは全体の6割弱ということになります。

許可の有無で、当直バイトの意味が変わる

ここは収入の話につながります。宿日直許可のある当直、いわゆる寝当直は、待機時間が労働時間に算入されないため、上限規制の下でもバイトとして組みやすい形です。逆に許可のない当直は、通常の労働時間として本業と通算されます。複数施設で働く医師にとっては、同じ「1回5万円」でも、上限の枠を使うかどうかが変わるわけです。

時給の意味も変わります。許可のある当直は「拘束は長いが労働密度が薄い」ことが前提なので、時給換算が低く出ても説明はつきます。許可のない当直で同じ日当なら、実働に対する単価としては低い、という見方になります。求人票の日当を拘束時間で割った数字の意味は、当直1回5万円は時給いくらかで整理しました。自分の条件で計算するならバイト換算ツールが使えます。

税引き後にいくら残るかは本業の年収で変わるので、あわせて年収別の手取り早見表も見てください。地域ごとの年収水準は都道府県別の統計にまとめています。

これから何が動くか

検討会資料によると、B水準・連携B水準の上限(年1,860時間)は3年ごとに見直しを検討することとされ、2035年度末をもって(2036年度以降)この特例を廃止することが目標とされています。C水準の上限も縮減の方向ですが、期限は定まっておらず中長期的に検証するとされています。

診療報酬の側も動きました。令和8年度診療報酬改定では、地域医療体制確保加算について、B水準・連携B水準の医師に係る年間の時間外労働時間の基準が引き下げられ、処遇改善のための地域医療体制確保加算2(720点)が新設されています。

2年半で割合は確かに下がりました。ただ、外科・救急科・産婦人科では2割超が残り、宿日直許可の内容を把握していない医師も一定数います。次の勤務実態調査は3年後です。それまでは、自分の勤務先が何水準なのか、当直に許可があるのかを個別に確認するしかない、というのが現在地だと思います。

この記事の数字はすべて厚生労働省の公表資料によるもので、記事中の解釈部分は資料に書かれていない範囲を含みます。個別の労働条件については、勤務先の労務担当や所轄の労働基準監督署にご確認ください。

出典

確認日 2026-09-20。数値は出典の公表時点のものです。