医師の台帳DOCTOR'S LEDGER

医師の台帳記事 › 勤務医の副業収入、法人化はいくらから得か

Article

勤務医の副業収入、法人化はいくらから得か

公開 2026-09-08法人化 副業 税金

講演・執筆・監修の所得を個人で申告する場合と合同会社に入れる場合で税額を比べると、本業1,500万円の勤務医では副業所得が年174万円あたりから法人が有利になります。分岐点の出し方と、有利にならない理由を整理します。

講演料・原稿料・監修料・コンサルティング料などの副業所得がある勤務医が、「法人を作ったほうが得か」を考えるときの基本は、その年に払う税額の比較です。個人の所得税は最高45%(住民税と合わせて55%)、法人の税率は所得800万円以下でおよそ22〜24%。この差が固定費を上回る所得水準が分岐点になります。計算は法人化の分岐シミュレーターと同じ式です。

個人で申告する場合の税

副業所得(売上から経費を引いた利益)は本業の給与所得と合算して課税されます。本業の年収が1,500万円の勤務医は課税所得がすでに33%の帯にあるため、副業所得には所得税33%(復興特別所得税を含めて約34%)と住民税10%がかかり、合計で約44% が税金です。副業所得が増えて課税所得が1,800万円を超えると40%の帯に入り、住民税と合わせて約51%になります。

副業がコンサルタント業など個人事業税の対象業種にあたる場合は、所得290万円を超える部分に5%が別途かかります。執筆・講演は一般に対象外です。

法人に入れる場合の税

合同会社などを作り、副業の売上を法人で受け、役員報酬を払わずに利益として残す場合、法人にかかる税は次の合計です(東京都23区・資本金1,000万円以下・従業者50人以下の中小法人)。

税目税率(所得800万円以下の部分)
法人税15%(800万円超は23.2%)
地方法人税法人税額の10.3%
法人都民税(法人税割)法人税額の7.0%
法人都民税(均等割)年70,000円(利益がゼロでもかかる)
法人事業税所得400万円以下3.5%、400万円超800万円以下5.3%、800万円超7.0%
特別法人事業税法人事業税額の37%

利益500万円なら法人税等の合計は約121万円で、実効税率は約24%です。これに決算・申告を税理士に頼む費用(年30万円程度が目安)が加わります。

分岐点はどこか

本業の年収と税理士費用の前提を変えて、法人が有利になる副業所得(経費控除後・年)を計算しました。

本業の年収税理士費用 年30万円税理士費用なし(自分で申告)
1,000万円約322万円約85万円
1,500万円約174万円約33万円
2,000万円約174万円約33万円

本業1,500万円の場合の内訳です。

副業所得個人で申告法人(税+税理士30万円)差額
100万円約43.7万円約59.4万円法人が15.7万円不利
300万円約131.1万円約104.2万円法人が26.9万円有利
500万円約218.5万円約151.4万円法人が67.0万円有利
800万円約355.9万円約226.0万円法人が129.9万円有利
1,000万円約457.6万円約299.6万円法人が158.0万円有利

副業所得が100万円程度なら、均等割7万円と税理士費用で法人は不利です。300万円を超えると差が出始め、500万円で年67万円、1,000万円で年158万円の差になります。

それでも「得」と言い切れない理由

この差額は「その年に払う税」の差であって、生涯で払う税の差ではありません。

事業所得か雑所得か

個人で申告する場合、副業の所得は帳簿を保存していれば事業所得、そうでなければ雑所得と扱われるのが原則です(収入300万円以下で帳簿がない場合は雑所得)。事業所得なら青色申告特別控除(最大65万円)や損益通算が使えるため、法人化の前にまずここを整えるだけで税額が変わります。

使い方

本業の年収と副業の所得、税理士費用を法人化の分岐シミュレーターに入れると、自分の条件で分岐点が出ます。個別の判断は税理士にご相談ください。この記事の計算は東京都の標準税率と2026年分の所得税率に基づく概算で、設立費用・社会保険・消費税・将来の受け取り時の課税は含めていません。

出典

確認日 2026-09-08。数値は出典の公表時点のものです。