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厚生年金の上限75万円へ:高年収の医師の保険料は年いくら増えるか

公開 2026-11-08社会保険 厚生年金 手取り

厚生年金の月額上限は2029年9月までに65万円から75万円へ。月給73万円以上なら本人負担は月9,150円、年約11万円増。年収別の増額と年金への反映を厚労省の資料で整理しました。

厚生年金の保険料には上限があり、いまは標準報酬月額65万円です。月給がこれを超える勤務医は、それ以上の給与をもらっていても、毎月の保険料は同じ額で止まっています。2025年に成立した年金制度改正法で、この上限が2029年9月までに75万円へ段階的に上がることになりました。この記事では、厚生労働省と日本年金機構の資料をもとに、いつ、いくら増えるのか、将来の年金にどう反映されるのかを整理します。

何がいつ変わるか

根拠は「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」です。2025年6月13日に成立し、6月20日に公布されました。厚生労働省によると、上限は現行の65万円から、2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円へ上がります。

厚労省の説明では、現行の65万円は全被保険者の標準報酬月額の平均の約2倍です。上限を設ける理由の1つとして、保険料の半分を負担する事業主の負担を考慮することを挙げています。

標準報酬月額は、基本給のほか残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の給与をもとに決まります(日本年金機構)。原則は4〜6月の報酬の平均で決まり(定時決定)、その年の9月から翌年8月まで使います。昇給などで大きく変われば、途中で改定されることもあります(随時改定)。

保険料率は18.3%で、本人と事業主が半分ずつ負担します。本人分は9.15%です。この料率のままとして、2029年9月以降の等級と本人負担を並べると次のとおりです。報酬月額の範囲は厚生労働省年金局の資料によります。

報酬月額2029年9月以降の等級本人負担(月)現行との差
63.5万円以上66.5万円未満65万円59,475円変わらない
66.5万円以上69.5万円未満68万円62,220円+2,745円
69.5万円以上73.0万円未満71万円64,965円+5,490円
73.0万円以上75万円68,625円+9,150円

現行は報酬月額63.5万円以上がすべて65万円等級で、本人負担は59,475円です(日本年金機構 保険料額表)。

注意点が2つあります。1つ目は賞与です。賞与は支給1回150万円が上限ですが、厚労省の説明は月額の上限についてのものです。2つ目は健康保険です。健康保険の標準報酬月額は別の等級表で、上限は50等級139万円です(協会けんぽ)。今回の話は厚生年金側のもので、健康保険の上限とは別物です。

なお、厚生年金の被保険者は、適用事業所に使用される70歳未満の人です。法人の事業所は適用事業所で、常時5人以上の個人事業所も「医療」を含む業種で適用されます(日本年金機構、厚生労働省)。

年収別の増額

まず、75万円等級の人の増え方を段階ごとに見ます。年換算は月額を12倍した額です。

時期上限本人負担の増加(月)年換算
2027年9月〜68万円2,745円32,940円
2028年9月〜71万円5,490円65,880円
2029年9月〜75万円9,150円109,800円

次に年収の例です。「月給+賞与」の内訳は説明のための仮定で、実際は勤務先で異なります。ここでは月給を報酬月額と同じとみなし、2029年9月以降の月給にかかる増額だけを示します。

年収内訳(仮定)等級増額(月)増額(年)
1,000万円月給70万円+賞与160万円71万円+5,490円+65,880円
1,500万円月給100万円+賞与300万円75万円+9,150円+109,800円
2,000万円月給130万円+賞与440万円75万円+9,150円+109,800円

月給が73万円以上なら、年収が1,500万円でも2,000万円でも増額は同じです。一方で、同じ年収でも賞与の比率が大きいと月給は低くなるので、等級が変わります。賞与は月額の上限とは別の話です。回数によっては1回150万円の上限にかかることもありますが、ここでは立ち入りません。

手取りへの影響

増えた保険料は社会保険料控除の対象です(国税庁 No.1130)。そのため、手取りの減り方は保険料の増額より小さくなります。

厚労省の試算(一定の前提)では、賃金などが月75万円以上の人は本人負担が月9,100円増え、社会保険料控除を考慮すると月約6,100円です。9,100円は厚労省の試算の表記で、保険料額表の折半額どうしの差は9,150円です。また、試算は月75万円以上の人を例にしていますが、等級表では報酬月額73万円以上が75万円等級に当たります。月65万円以下の人の保険料は変わりません。

所得税だけの目安も計算してみます。国税庁 No.2260 では、課税所得900万円〜1,799.9万円の帯の税率は33%で、復興特別所得税を含めると33.693%です。この帯に入る人なら、年109,800円の増額で所得税は約3.7万円軽くなる計算です。住民税の軽減はこの計算に含めていません。厚労省の月約6,100円は別の前提の試算なので、この計算とは一致しません。

事業主も本人と同額を負担します。75万円等級なら、事業主の負担も2029年9月以降は月9,150円、年換算で109,800円増えます。

いまの手取りは手取り計算機や、早見表の年収1,500万円の手取り、年収2,000万円の手取りで確認できます。いずれも現行の上限65万円で計算しており、引き上げは反映していません。

将来の年金はどれくらい増えるか

標準報酬月額が上がると、厚生年金の報酬比例部分に反映されます。平成15年4月以降の加入期間は、平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数で計算します(日本年金機構)。

厚労省の試算(一定の前提)では、賃金などが月75万円以上の状態が10年続くと、年金は月約5,100円増えます。この増額は一生涯続き、年金課税を考慮すると月約4,300円です。

10年分の負担の増加を、増えた年金で単純に割ると次のようになります。

計算のもと10年の本人負担の増加年金の増加(年)単純に割った年数
税を考えない(9,150円×120か月、月5,100円)109.8万円61,200円約18年
税を考慮した厚労省の数字(月6,100円×120か月、月4,300円)73.2万円51,600円約14年

この計算は、物価や年金額の改定、受給開始年齢、段階的引き上げの途中の期間、事業主負担を考えていません。年金を受け取る期間も人によって違います。この単純計算だけで得か損かは決められないので、目安の1つとして見てください。

給与明細での確認の仕方

自分がどこに当たるかは、毎月の給与明細の厚生年金保険料の欄で見られます。額が59,475円なら、現行の上限の等級にいると考えてよさそうです。

上限が上がるのはいずれも9月で、定時決定の等級が切り替わる月と同じです。月給が等級の境目に近い人は、4〜6月の各種手当の多い少ないで等級が変わることがあります。

この記事の計算は、1か所の勤務先の給与だけを前提にしています。実際の保険料は、勤務先の給与担当や日本年金機構の資料で確認してください。

出典

確認日 2026-11-08。数値は出典の公表時点のものです。